クリエイティブなチームの在り方 - プロダクトとチームの人間味 -
エンジニアも8年目になり、組織全体を考えるようになりました。
自分の頭の中の整理がてら、クリエイティブ組織(特にtoCアプリケーション開発組織)の在り方について、最近考えていることを書き残しておこうと思います。
主に、デザインシンキング、アジャイル開発、心理的安全性という最近よく聞く言葉が何故大事なのか、現在どういう組織が求められているのかという話です。
ありふれた話をしている部分もあるし、主観的な部分もあります。
不確実性の時代とアプリケーション
「不確実性の時代」、「VUCA」というワードは数年前からよく耳にします。
Wikipediaによると、VUCAという言葉はもともとアルカイダの予測不能の戦闘スタイルを表す言葉だったらしいです。
ビジネスの世界においても、テクノロジーの急速な発展などから市場が予測しにくくなった状況を表すのに使われています。
アプリケーション開発の現場においても、不確実性への対処は重要な課題になっています。
検索エンジン、スマートフォン、App Storeなど、過去にも大きな市場の変化がありましたが、近年の最も大きな変化はSNSの登場です。
消費者の選択肢や選択の手段が少なかった時代は、「ロジカルに考えてニーズを捉え、大量生産し、マスマーケティングでとにかく売る」というスタイルが一般的でした。
検索エンジンの普及によってこの構造は大きく変化しましたが、SNSの登場により、さらに大きな変化を見せます。
一般消費者は、情報過多の世の中で「信頼出来る人」から得られる情報を重視するようになり、露骨に広告的な情報は「ステルスマーケティング」として嫌悪の対象となりました。
消費者は多種多様な価値観を持って情報を取捨選択し、消費します。
時代はより一層、マスから個へ向かいます。
高感度なインフルエンサーはこの流れを捉え、「共感」を重視してフォロワーたちと接します。
現代の消費者の選択には、過去のマスマーケティングには存在しなかった人間味が存在し、それこそがアプリケーション開発における最大の不確実性となっています。
アプリケーション開発は、多種多様な人間の価値観と向き合うことを求められるようになりました。
デザインシンキング
ロジカルシンキングによりマスのニーズに応える時代から、多種多様な人間性と向き合う時代に変化しつつあります。
外資系の戦略コンサルティングファームも、この流れに対応すべく対策をうっています。
マッキンゼーやBCGのデザインシンキング導入が良い例です。
ロジカルシンキングの権化のようなイメージのコンサルティングファームですが、この辺の柔軟性はさすが外資という感じがします。
デザインシンキングというワードが出てきましたが、近年の開発組織を考える上で重要なキーワードと言えます。
基本的には「人間を中心に考える」という考え方ですが、ロジカルシンキングと比べてフレームワーク的な考え方ではない分、人によって捉え方が様々です。
※ ところでこのデザインシンキング、ファーストキャリアがWeb系企業だったりすると、何が新しいのか全く分からないかもしれません。(自分はそうでした)
「ユーザ中心で考えない」って逆にどういう状況なんだと。
前述の通り、マス向けのやり方で成功してきた企業が世の中に沢山あります。
作れば売れる時代だったので、ユーザ中心に考えることはそこまで重要ではありませんでした。マスで捉えれば良かったし、消費者側の選択肢も多くなかったので、ある程度企業側の意見を消費者に押し付けられる状態でした。
こういう企業からすると、デザインシンキングという考え方は今までと大きく異なり、その新鮮さから若干バズワード化している部分があると思います。
話がそれましたが、不確実性(すなわち多種多様な価値観)と向き合う時代において、ユーザと向き合う考え方が重要性を増してきています。
レッドオーシャンと思える市場の中でバーティカルなサービスが流行ったりするのは、ユーザと真摯に向き合った結果なのかもしれません。
アジャイル開発
作るべきものが分かりやすかった時代、比較されるものが少なかった時代は、最初に仕様を決めきって作るウォーターフォール型の開発が主流でした。
最初に仕様が決まるので工数計算もしやすく、開発のスタイルとしても外注がメインでした。
時代が変わり、アプリケーション開発は不確実性を増してきました。
デザインシンキングによってユーザに寄り添ったアイディアを出したとしても、それが本当に売れるかどうかは出してみないと分かりません。
このような時代の変化を受けて、アジャイル開発という手法が注目され始めました。
仕様の変更を前提とした開発手法で、実際の開発現場では、
ミニマムに作る → 触ってもらう → フィードバックを受ける → 修正する
というサイクルを繰り返しながら開発を進めることが多いです。
いわゆるPDCAサイクルを回すのに適した開発手法です。
「失敗を前提として、継続的な改善にフォーカスした開発手法」とも言えると思います。
継続的な改善が求められるこの手法は外注と相性が悪く、アジャイル開発を求められる企業の多くが内部にエンジニア部隊を抱えています。
※ アジャイル開発に関しては世の中に多くの誤解がありますが、その点について以下の記事が良くまとまってます
開発組織の在り方と心理的安全性
ユーザの多様な価値観と向き合い、クリエイティブな解を出すためには、デザインシンキングやアジャイル開発の実現が重要です。
そしてこれらは一貫して1つのチームで行なわれる必要があり、チームの全員に平等に発言権があるべきです。
以下のような理由があります。
- デザインを起点として継続的な改善が求められる。初期のビジョンや仮説が大事
- 完全分業は開発をウォーターフォール化させる
- 全員がデザインを意識することで全員のアウトプットクオリティが上がる
- 様々な職種の意見が混ざり合うことで、今までになかった発想が出やすくなる
- 時には失敗する。というか何度も失敗する。辛い。辛い時に頼れるのはチームとビジョン
実際に、アイディアは良いのに開発以降を外注したことでユーザを度外視した無機質なプロダクトになり、全くユーザに使われないという事例を数多く見てきました。
或いは、社内にエンジニアがいても、完全分業のようになってしまって外注と変わらない状況になっている例も見ました。
エンジニアが「この仕様なんで必要なんだっけ」と思いながら何も言わずに作るようになったら、それはもう外注と変わりません。創り手の魂の乗らないアプリケーションに良いUXは宿りません。
デザイナーもプランナーもエンジニアも、皆がユーザと向き合って、デザインして、作って、作ったものはすぐに見せて率直なフィードバックを得て、直して、リリースして、数字を見てまた議論して。
そういう組織であるべきです。
「全員の意見を聞いていたら進みが遅くなる」と言ってトップダウンな進め方をしてしまう人がいますが、えてして独りよがりな間違った方向に進みます。
間違った方向に進むことを「進んでいる」とは言わないし、そういうやり方をしていたらチームから人は離れ、継続的な改善なんて実現出来ません。
近年、心理的安全性の重要性がよく話題になります。
不確実性と向き合うことは非常に大変なことです。成功が確約されません。何度も何度も失敗するし、何が正解か誰も分からない中で、それでも自分たちの意見を信じて進むのです。皆不安なんです。
だからこそチームでないといけなくて、心理的安全性が重要なんです。
全員の意見に可能性があり、全員で不安に立ち向かっていくのです。
失敗した時、意見を言いたいとき、一緒に戦う人が居て、自分を認めてくれる人がいる環境が大切です。
そういう環境でこそ、不確実性にずっと立ち向かえるのです。
まとめ
現在のアプリケーション開発は、SNSの普及による消費基準の変化を受けて、ユーザの多様な価値観と向き合う必要性が増してきています。
そのような状況で、デザインシンキングやアジャイル開発が重要になり、それを実現するには心理的安全性が保たれて全員が発言出来るフラットな組織が必要とされます。
自分の頭の中の整理として書きましたが、誰かの役に立てれば幸いです。